石綿関連疾患の認定基準

石綿関連疾患の認定基準

石綿に関わる病気で国からの給付金を得るためには、労災もしくは石綿救済法の認定基準を満たす必要があります。認定基準はそれぞれの病気によって異なりますし、職歴の聞き取り調査、肺の再撮影、再検査が必要なものもあります。

なお、労災認定基準の適用には、労働者(労災保険特別加入者を含む)として、石綿ばく露作業に従事しているか、又は過去にしたことがあることが必要です。そして労災認定に必要な「石綿ばく露作業従事期間」については、疾患別に定められています。

石綿肺(じん肺)

労災認定基準
  • じん肺管理区分が管理2又は3又は4であること

※管理2又は3の場合は、以下のいずれかの合併症にかかっていること

  • 肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎
  • 続発性気管支拡張症、続発性気胸、原発性肺がん
解説

石綿肺は、一定以上の粉じんを長期間吸入することで発症する肺の線維増殖性変化を主体とする病変(じん肺)の一種です。石炭、コンクリート粉じんでも発症しますが、石綿を原因とするじん肺を石綿肺といいます。軽度(管理区分1〜2程度)では自覚症状がない場合もありますが、重症化すると強い呼吸困難を引き起こします。また、石綿肺は肺がん、肺結核、気管支炎などを併発しやすく、命に関わることもあります。

医師が石綿に関わる作業従事歴を聞き取りしていないと、「間質性肺炎」や「肺線維症」など原因があいまいな病名に診断され労災申請に至らないこともあります。

じん肺管理区分は、じん肺健康診断により、所定の申請用紙を作成してレントゲン撮影結果等の必要資料を添え、労働局に管理区分決定申請することでその結果が得られます。

じん肺管理区分4の患者はそのまま労災として認定されますが、管理4よりも低い管理2又は3の場合、指定の合併症を併発していることが労災認定の条件になります。

石綿ばく露作業従事歴があればよく、特に期間の定めはありません。

石綿救済法認定基準
  • 大量の石綿ばく露があること
  • 石綿肺管理2以上かつ著しい呼吸機能障害(じん肺管理区分4相当のみ)
  • 他疾患との鑑別ができること
解説

じん肺で石綿救済法による補償を受けるためには、管理区分4相当である必要があります。
じん肺法により管理区分4の認定を受けるには、レントゲンでじん肺の大きな陰(大陰影)が認められるか、管理2又は3の陰影(小陰影)とともに著しい呼吸機能障害(肺活量や酸素交換率の低下)があることが必要ですが、石綿救済法の場合、著しい呼吸機能障害があることが必須の条件となっています。
肺がんや中皮腫と違い、「大量の石綿ばく露があること」が要件となっています。ばく露の種類は、職業によるか、環境によるかは問われません。

肺がん

労災認定基準

次のいずれかの基準を満たす必要があります。

  • 石綿肺(第1型以上)に併発した肺がん
  • 胸膜プラークがあり、石綿ばく露作業従事期間が10年(一部の作業について平成8年以降の従事期間は1/2とする)以上ある方の肺がん
  • 広範囲の胸膜プラーク+石綿ばく露作業従事期間が1年以上ある方の肺がん
  • 一定量以上の石綿小体または石綿繊維+石綿ばく露作業従事期間が1年以上ある方の肺がん
  • 特定の石綿ばく露作業(石綿紡織品製造、石綿セメント製品製造、石綿吹付け業のいずれか)が5年以上ある方の肺がん
  • びまん性胸膜肥厚を併発した肺がん
解説

肺がんは、石綿以外にもその原因(例えば喫煙)が考えられるのが特徴です。
そのため、労災の認定を受けるためには、一定以上の石綿粉じんにばく露したことの根拠を求められます。

一定期間以上の石綿作業に従事したことは、社会保険記録や会社の在籍証明書、同僚の証言によって証明することとなります。
胸膜プラークはX線やCT画像、手術中や死亡後の剖検による目視などにより確認できます。石綿小体や石綿繊維は肺がん手術や死亡後の剖検によって採取した肺組織の検査によって計測できます。

なお、石綿ばく露開始から10年以降に発症していることが前提となります。

石綿救済法認定基準

次のいずれかの基準を満たす必要があります。

  • 胸膜プラーク所見+肺線維化所見(石綿肺第1型以上)がある方の肺がん
  • 広範囲の胸膜プラーク所見がある方の肺がん
  • 一定量以上の石綿小体又は石綿繊維が確認された方の肺がん
解説

石綿救済法の対象となる肺がんは、就労歴が必要ない反面、医学上、相当量の石綿を吸い込んだことを客観的に示す所見が必要になります。

中皮腫

労災認定基準

次のいずれかの基準を満たす必要があります。

  • 中皮腫の確定診断+石綿ばく露作業従事期間1年以上
  • 中皮腫の確定診断+胸部X線の像が第1型以上の石綿肺
解説

中皮腫は鑑別診断の難しい病気です。確定診断を得るためには病理組織検査や細胞診の実施が必要になります。
中皮腫は短期間、少量の石綿ばく露でも発症する危険があるため、石綿ばく露作業従事期間が1年以上あることが認められれば労災認定を受けられます。石綿ばく露作業従事期間が1年に満たず、かつ石綿肺所見がない場合でも、本省協議により認定されるケースもありますのでご相談ください。

石綿救済法認定基準
  • 中皮腫の確定診断
解説

中皮腫であることの確定診断が得られれば、石綿救済法の適用が得られます。
もっとも、石綿救済法は労災と比べて補償内容が低いので、できる限り労災申請を目指すべきでしょう。

びまん性胸膜肥厚

労災認定基準

以下のすべてを満たすびまん性胸膜肥厚であること

  • 石綿ばく露作業従事期間が3年以上あること
  • 著しい呼吸機能障害があること
  • 一定以上、肥厚の広がりがあること(片側の場合1/2、両側の場合1/4)
解説

胸膜肥厚があるだけでは足りません。一定以上の広がりがあり、かつ、著しい呼吸機能障害があることにより労災認定されます。
労働者(または労災保険特別加入者)としての石綿ばく露作業従事期間が3年以上であることの証明ができない場合は、本省協議となりますので、直ちに認定されないということではありません。

石綿救済法認定基準

以下のすべてを満たすびまん性胸膜肥厚であること

  • 石綿ばく露期間が概ね3年以上あること
  • 著しい呼吸機能障害があること
  • 一定以上、肥厚の広がりがあること(片側の場合1/2、両側の場合1/4)
  • 他の疾患との鑑別ができること
解説

肺がんや中皮腫と違い、「石綿ばく露期間がおおむね3年以上あること」が要件となっています。ばく露の種類は、職業によるか、環境によるかは問われません。

良性石綿胸水

全件本省協議となる。

解説

胸水の原因は石綿以外にも結核、リウマチなど様々なものがあります。胸水の原因が石綿であるとの判定は、厚労省本省と労働局が協議した上で判定されます。

  • 上記認定基準は、労災については平成24年3月29日付基発第0329第2号「石綿による疾病の認定基準」及び石綿新法については、「石綿による健康被害の救済に関する法律」(平成18年3月27日)及びその一部改正法(平成20年12月1日)によるものです。
  • 上記以外にも、認定に必要な条件があります。また、認定基準にあてはまらない場合でも認定される可能性がある場合があります。
    詳細についてお知りになりたい方は、当弁護団までご相談下さい。

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