工場型アスベスト国賠訴訟・
和解金
工場型アスベスト国賠訴訟とは
大阪の泉南地域にはかつて小規模零細な石綿工場が多数稼働し被害者を生み出しました。
2005年6月、兵庫県尼崎市のクボタ旧神崎工場周辺住民に多くの中皮腫患者が発生していることが発覚した「クボタショック」を契機にアスベスト問題が一気に社会問題化し、そのなかで、石綿肺、肺がん、中皮腫などにり患した多くの泉南の被害者が、国が適切な時期に規制を行わなかったことなどを理由に国家賠償訴訟を2006年5月提訴しました。
約8年半にわたる裁判の結果、平成26(2014)年10月9日、最高裁判所は国の責任を認め、被害者に慰謝料を支払うことを国に命じ、以後、国は、泉南国賠最高裁判決で示された責任範囲に該当する被害者に対しては、裁判上の和解により損害賠償金を支払うことになりました。
この国との和解を求めて提訴する訴訟を「工場型アスベスト国賠訴訟」といいます。
国による和解手続き(工場型アスベスト)
認定条件
最高裁判決が下されたことにより、国は、勝訴した被害者と同じような条件のもとで石綿の被害にあった人に対し、損害賠償金の支払いを行うことを明らかにしました。損害賠償の対象になる被害者は以下の条件すべてに該当する方です。
要件1
昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、労働者として、石綿粉じんにばく露する作業に従事した方
- 昭和33年5月から昭和46年4月までの間に石綿工場で就労した方です。 上記期間内に就労した事実があれば、一部の期間でもかまいません。その前後の期間を超えて働いていても補償の対象となります。
要件2
その結果、石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水に罹患した方
- 石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水にかかった方が対象です。 それぞれ、業務上石綿を取り扱ったことが原因とするには基準があり、事実確認と医師の診断が必要です。
要件3
提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること
- 石綿の病気の確定診断、死亡、労災認定またはじん肺管理区分決定から20年以内に請求する必要があります。例えば、石綿肺(管理2など)を長く患っておられる方は、最初の管理区分決定から20年を経過した場合には時効になるのでご注意ください。
基準慰謝料
国の和解基準額は、病気の種類や進行度や被害者が生存中か死亡しているかによって変わります。また、下記の慰謝料金額のほかに弁護士費用の一部や遅延損害金が加算されます。
病態 | 基準慰謝料 |
---|---|
石綿肺 じん肺管理区分 管理2で合併症がない場合 | 550万円 |
石綿肺 じん肺管理区分 管理2で合併症がある場合 | 700万円 |
石綿肺 じん肺管理区分 管理3で合併症がない場合 | 800万円 |
石綿肺 じん肺管理区分 管理3で合併症がある場合 | 950万円 |
石綿肺 じん肺管理区分 管理4、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚 | 1,150万円 |
死亡 石綿肺 じん肺管理区分 管理2、3で合併症がない場合 |
1,200万円 |
死亡 石綿肺 じん肺管理区分 管理2、3で合併症がある場合、または管理4、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚 |
1,300万円 |
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解決実績
当弁護団では、2014(平成26)年以降2021(令和3)年現在まで、140件以上の被害相談を受け、うち80件以上、国との間で和解解決しています(※関西弁護団担当事件に限る。)。
当弁護団がこれまで相談を受け、解決した事件の被害状況、勤務先、従事作業や取扱製品には以下のようなものがあります。
なお、国との間で和解が成立し賠償金を受け取った方でも、勤務先などから別途賠償金を受領できる場合があります。
被災者の傷病名
石綿肺(管理2合併症あり・なし、管理3、管理4)、悪性胸膜中皮腫、悪性腹膜中皮腫、肺がん、びまん性胸膜肥厚
勤務先(出入り先)
日本アスベスト(現:ニチアス)、竜田工業、久保田鉄工(現:クボタ)、日本バルカー工業(現:バルカー)、浅野スレート(現:A&Aマテリアル)、三菱マテリアル建材(現:エム・エム・ケイ)、宇部スレート、倉敷レイヨン(現:クラレ)、久代石綿(現:クシロブレーキ)、河原冷熱、渡辺工業、富士化工、朝日石綿(現:A&Aマテリアル)、五稜石綿、南海パッキン工業、三好石綿(現:エム・エム・ケイ)、関西スレート、昭和電工、日産自動車、三陸電業株式会社(三陸ファイバーグラス)、京葉アスベスト、山部石綿、黒田石綿工業(クロタ工業株式会社)、アイコー、日アス鉱繊(現:ニチアスセラティック)、重本電気工芸、東洋製紙(現:王子エフテックス)、不二製作所(現:不二サッシ)、渡辺プレス、朝日石綿工業山梨工場(現:アスクテクニカ)、石野ガスケット工業(現:菊川シール工業)、ダイマル工業用品商会、湘南スレート、日本石綿紡織株式会社(現:NiKKiFron)、富士興業、昭和スレート(現:株式会社昭和)、田端石綿工業所、第一スレート工業、鴨川工業、東芝、各和精機(現:ソーシン)、日本石綿商、日化建材、宏富士化学鉱業、日本エタニットなど
※当時の名称です。
作業内容(製造製品名含む)
混綿作業、紡績、紡織(織布)、裁断、切断、金属加工・溶接、研ま、製管、仕上、梱包、石綿袋の再生、分析・試験・検査、監督・管理、構内運搬、設備修繕(ミキサーのモーター修理、送風機検査)など
製造製品名(一般名称含む)
保温材、組みひも、石綿糸、石綿布、リング、パッキン、ジョイントシート、ブレーキライニング(摩擦板)、石綿フェルト、波板スレート、化粧板、ケイ酸カルシウム保温材(ケイカル板)、シリカライト、スーパーテンプボード、マリンボード、カポサイト、スプレーテックス、ラックス、湯沸かし器
裁判例
国の和解条件を満たす工場型アスベスト事件に関して、肺がんの遅延損害金の発生が確定診断日ではなく労災認定時とする国の支払基準が不合理として争い、勝訴判決を獲得しました。【福岡高等裁判所令和元年9月27日判決、福岡地裁小倉支部平成31年3月12日判決】
上記の判決の結果、国はそれまでの取扱いを改め、中皮腫や肺がんの生存被害者に対し、労災認定時ではなく、確定診断日からの遅延損害金を支払うようになりました。